声・まっくら森

天寧煌子の詩置き場

うつわ

これだけ

これがすべて

これしかない

これでなければ

これいがいは

ありえない

うつわ

をほうって

かわりの

うつわ

をさがしながら

これしかない

うつわ

もやっぱり

かかえて

かわりの

うつわ

をもとめる

 

(2018.4.20)

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【ひとこと】

 極意はかわりのうつわという言葉がひらめいた。

出現

魅せられるままの導きは

転がる種に絨毯を敷いて

大地に錨を降ろした

地面に空に 繁茂する

無数の根 のびる枝 ふえる葉

蔦はからまり 苔まで生えた

あの木になることも

その木になることも

できたのに

木はこの地に姿を現し

種の転がる先を果てまで描いて

深々と根を伸ばした

 

(2017.8.17)

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【ひとこと】

 十数年の体験を一言にするなら…。

いびつの心臓

かれがそむけた心臓を

ときには頭上に掲げたく

ときには握り潰したくもあり

その拡声の臭気を前に

きみもまた かぎつけられた愛憎の

煙を嗅いだ

あわれなる きみがいびつの塊よ

両極揺れる街宣よ

自ら頼もしからぬ玉座よ

この血をもはやかざすまい

きみは心臓を その体内に戻し

かたく糸で縫い合わせた

かれの沈黙を遠ざけるために

 

 

(2017.8.1)

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【ひとこと】

 気に入らない気に入らない気に入らない。

 コッソリ書き直すかもしれない。

ひとり相撲

――イラッシャイマセ

――話がしたいのですが

――何ヲ話シマショウカ? 君ノ好キナヨウニ話シテクダサイ

――何を話してもいいですか?

――何ヲ話シテモイイデス

――じつは○○は××で、△△しました

――○○ハ××デ、△△シタノデスカ

――それはどういう意味ですか?

――○○ハ××デ、△△シマシタ、トイウ意味デス

――○○と××と△△の背景にある意味はなんですか?

――ツマリ○○ハ××デ、△△シマシタ、トイウ意味デス

――○○は××で、△△しました、という意味だというのですか……?

――○○ハ○○、××ハ××、△△ハ△△、トイウ意味デス

――○○と××と△△とはそもそもなんですか?

――ソモソモ○○ト××ト△△デス

――その背景にある意味はなんですか?

――背景ニアルノハ○○ト××ト△△デス

――その言葉に意味はあるのですか?

――意味ハアリマス

――……

 

 

(2017.5.26)

きみがいなくなったら

愛する人が死んだときは死なねばならぬと

むかし愛した詩人がいった

もし きみがぼくを置いて

どうしてもぼくのなかから消えるというなら

ぼくはぼくをくびるかわりに

きみをこの手に生み出しましょう

どこにもいないきみのうたを

ぼくのうちに咲かせましょう

行ってしまったきみの息吹を

残されたぼくに注ぎましょう

生きるほかはないのですから

生きるほかはないのですから

遠いうた

世界の片隅から呼びかける
虚しい願いはこだまする
届いても届かなくても
声をかぎりに歌っていた

 

消え入る祈りに絶望と
透明な涙が混じる
決して返ってくることのない声
決して報われることのない声

 

人に祈ると黙られる
その法則をいつ知った?
神様ではないのだから
人間に祈りを受け止める器はない

 

それでも声をかぎりに歌っていた
私は何を信じていたのだろう
世界から景色が消えていく
じぶんの歌だけがこだまする

 

虚しい祈りに透明な涙が混じる
押しつぶされた悲しみを
無我夢中で虚空へ描いた
決して報われることのない声

 

(2012.4.13)

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【ひとこと】

 お蔵入りにして危うくゴミ箱行きになっていたはずの詩を復活させた。

 昔の詩は単調だけど、現在より素直な感じがする。

カンテラ

岩陰が闇に沈む
暗黒の洞窟の奥
奥、奥、そのまた奥深く
肉厚に膨張した
透明の膜を着ぶくれて
沈黙に佇立している
奇怪な異形の塊
――それがわたし

 

君よ カンテラに灯をともし
その手に掲げ持て
そうして黒く染まった足下を
あきらかに照明し
ここまで歩みきておくれ

 

  カンテラを掲げるな
  お前はたちまち
  狙撃されてしまうだろう

 

君は知らないのだ
この照明なしに
洞窟を 闇黒を
不可視の着ぶくれを
わたしと君を隔絶している障壁を
決して視覚できないことを……

 

  カンテラを掲げるな
  カンテラはなくとも
  お前はお前でいられる

 

君は知らないのだ
お前とわたしの基点を駆動している
車輪の型が異なるからくりが
透明の厚着を生みだした
はじまりの物語を……
カンテラの照明なしには
素肌をさらせない
言伝は永遠に行き交わない
秘められた仕掛けを

 

君よ カンテラを掲げよ
そうして洞窟を 闇黒を
あきらかに照明し
ここまで歩みきておくれ
君よ わたしが見えるまで
君よ わたしに至るまで

 

(2018.3.22)

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【ひとこと】
 この詩は、「障碍障碍言わないほうがいい」と言われたことに対する、私の答えである。
 君、カンテラなしで私が見えるか。否、決して見えない。
 君、カンテラなしで私に至れるか。否、決して至れない。
 君、カンテラなしで私と話せるか。肉声で話せるか。否、決して話せない。
 そこにいるのは、君たちの型に造型した私の影だ。
 この造型を、私だと思ってはならない。
 人間は、見られたままに、在るのではない。