地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

2017-01-01から1年間の記事一覧

感想:『拒食症の家』を読んで

『拒食症の家』吉川宣行著、1998年発行、EPIC 日本自分史センターにて、詩「うめき」と同じ内容を職員に訴えて、閉架書庫から出してもらった自分史。一読してこれは凄い、入手したいと願う大満足の本だった。 家族との葛藤を通して、少女が拒食症になってい…

表出vol.1 声 まっくら森レポート

2017年7月15日(土)~7月23日(日)、池田町の土川商店「場所かさじゅう」にて表出vol.1 声 まっくら森が開催されました。 以下は、出品者の一人・天寧煌子目線のドキュメントです。ほぼ日記的内容になっています。 ◆7月15日(土)今回、天寧がメインに…

詩:客人

ここは小さい穴ぐら わたしの家 誰も立ち寄らないと ついしょぼくれて つい寂しく ついふてくされもして それなのにきょう あなたは ていねいな物腰で穴ぐらに進みきて 暖炉の前に手をかざしたりなどして 椅子に腰かけてくれる その止まった背中に ほんのり…

詩:穴ぐらと重力

薄暗い穴ぐらの奥まった 最も深い底の底 そこにわたしは置いてきた 窮迫したこわもての告訴状 かれらと千切(ちぎ)れた たったひとつの千言を どうしてもかれらに届けなければならない いちばん尊い言伝(ことづて)を だがかれらの歩幅は大きく その歩調は早す…

詩:晴れ間の急迫

行かなくてはならない わたしの足どりは重い 過去の亡霊が立ち上がってくる その亀裂が生じる瞬間が まるい調和のなかから ぎらと顔を突き出すのが 見えてしまうから 晴れた空が突然かげり 雨降る間もなく稲妻が落ちてくる その急迫が光るのを 鮮烈に感触す…

詩:胸騒ぎ

あまりにもまるい達成が続くので もしやあなたを押し切ったまま ひとり得意の終止符を発行して すましているのではないかと 疑念がさわいでおります あなたが少しばかり口をひらこうとも さらにもの言いたげな峻烈の物語が 角張らない笑顔の後ろに 匿われて…

詩:屠る歌

びりびりに引き裂いて散らばった嘆きを ゴミ箱に屠る手をためらい 胸に抱えてもう一度抱きしめる 紙屑の端にはちぎれた無数の文字が 名残惜しげに繊維のうえにうごめいた ――いやだめだ お前は 間引きされる定めの子 日陰を歩む斜陽の嘆き 見たろう かれの素…

詩:花壇の物語

長く重苦しい冬の年月は 透明な患いを吹雪にのせ ぽとりと吐息をこぼしました 冬は誰かに対して何かの意図をもって 嘆息したのではないのです ひとりでの出生でございました 歓待のまろやかな呼び声 拍手に千切(ちぎ)れる艶やかなリボンに 化かされてはな…

詩:だるまの無言

手足なく 口のきけないだるまは 地べたをころがりながら からだで詩を吐く だるまの無言は とうといんだ (2017.7.17) * 【ひとこと】 「地べたを這いずりながら」のほうがいいかなぁ? 「地べたをころがりながら」のほうが自然かなぁ? と迷いながら、今…

詩日記:普遍の掌に爆発する特殊

2000年頃から、苦しくなると詩のような言葉を吐かずにはいられなかった。自分の詩がヘタクソであることは、5、6年前からよく知っていた。2015年に作品をブログにまとめたが、それはいかにも稚拙でヒステリックな叫びだった。2016年冬、「詩」といえるよう…

詩:悪の糸

アンタが悪い んじゃない こんがらがった糸が 悪いんだ (2017.6.29)

詩:蟻の欠落

蟻は山の巨大を知った 蟻は体の小粒を知った 歌を歌えば歌うほど 歌は足りない 言葉を手繰れば手繰るほど 言葉は足りない 捻りなく ただありのままをかたどるだけが 蟻の仕事だった ときには己の住処さえ うっかり零してしまうこともあった 勢いばかりの野暮…

詩:こよい子ができる

こよい手製の 子ができる めんどくさい 階段ひとまたぎの てっぺんを ぐわっと たぐり寄せたい (2017.6.27)

詩:うめき

へたでも しろうとでも これをかかないでは いきていられなかった すごみのあるほんが みたいのです そういうほんは おくにおいやられて うまい りっぱなほんが おもてにのこっているのでは ないのですか せんそうをかたりつぐのは もちろんとてもだいじです…

詩:カインのしるし

地を伝えば石礫 宿を守れば震源地 額に刻まれた カインのしるしのために わざわいは招き寄せられ わざわいから守られる このしるしあればこそ

私の詩について

「汚れ役」 昼の憧れ 鈴のように歌い 喜びの音を 軽やかに鳴らす しかし絵筆は それ以上の仕事をしてはくれない わがことにあらずと そっぽをむく 夜の苦しさ 心の澱にうごめく闇を すくい取るのは きまって言葉の役目 絵筆の放棄した仕事を 拾っては投げつ…

詩:国境

おそらく君が君であろうとして 踏みしだいた足下は 僕が僕であろうとして 築いた牙城の本丸だった もう幾度も 国境を定めてきたが 制止の声を聞いてか聞かずか 君は遂に 踏み越える禁忌を なおざりにし通した 旗を折られた本丸の大将は 怒り狂って出陣した …

詩:無言の言葉

なぜ今頃になって 叫ぶのか? 在りし日の わたしの無言よ 書を遠ざけ 文字を退けて ただ己の闘いを 耐え忍ぶだけで 尊い一日は暮れていった―― 表には 緘黙をもって心を遮断し 巨大な沈黙が 荒野を満たした なぜ今頃になって 語るのか? 在りし日の わたしの…

詩:推敲推敲また推敲

推敲推敲また推敲 推敲ばかりしております 一体いつになったらば 言葉はピタリ嵌まるでしょう 推敲推敲また推敲 推敲ばかりしております 何回チェック重ねても まちがい見出しまた一つ 推敲推敲また推敲 推敲ばかりしております 足し算引き算こねくって 生き…

詩:無言の詩

人差し指を立てる口 秘密の言葉そのままに あなたに宛てる無言の詩 気づくや否や鎧もて 覆える胸に隠れたり (2017.2.2)

詩:十方塞がりを描いた結末

四方八方ならぬ十方塞がりの ドウにもコウにも方途がつかぬ 行き詰まりのこの現状を 忠実に描き出したいと願ったが 掘りあてる言葉は当然ながら 希望のきらめく余地のない 圧迫した様相であったとさ みんなみんな望みがほしい その歌は市井に顧みられず ここ…

詩:ずぶといひと

ずぶといひとよ お前はとうとう勝利をおさめるのか お前たちのなかには微笑ましい者もいて ずいぶん憧れもした、手を伸ばそうともした けれどもお前とはけんけんがくがく どうにかこうにか接地点を探っていたものだが その片手はとうとう勝ち誇ったように 一…

詩:イジワル

わたしはイジワルだった どんなに尊敬されようとも 実はわたしはイジワルだった 確かにあなたはドンヨリ鈍い、昏い、疎い それゆえにこれっぽっちも心打たず それゆえにわずらわしくて イジワルしちゃった どんなに謝っても謝りきれない 額を地面にこすりつ…

詩:これっぽっちのさいわい

ふと 命綱を切り離した 白く照らし出された地上に満ちる禍(わざわい)は 無関係のまま皮膚に調和した 昔は幸せでも不幸せでもなかった 路傍の刹那は ありのままでいられると 凱歌を放った ふと 命綱を切り離した 白く照らし出された地上に満ちる禍は しばしの…

詩:罠

まったくえらい目に遭った 規則正しく折り目正しく 生活していたはずなのに こんな罠があったとは まったくえらい目に遭った 体調リズム気遣い万全 抜かりなかったはずなのに 藪から棒につかまった まったくえらい目に遭った しばし休憩してからさてと 波に…

詩:記憶の鎖

心の深手を背負ったまま 言葉を操り書くことも 歌うことも踊ることも 涙を流し悲しむことも禁じられ 空想の檻に閉じ込められて 記憶の中で自傷する君 人間らしさを奪われて 気が遠くなるほど長い年月 頭でさまよった反復の日々 どうかほんの少しずつでも 話…

詩:知らせ

縁なき後も消しあぐねていたアドレスを 思い切って棄てた直後に知らせは来た 葬儀場に駆けつけたとき あなたは花に囲まれて 人々の涙のなかに咲いていた 長い年月見なかったその顔は 確かにあなたで 女神のように美しく 重い安らぎに胸を衝かれた 愛する人に…

詩:声

わたしの中にある ふんわりしたやさしいこころを取り出して まじまじと眺めてみる やさしい、あたたかい、いとしい、やわらかい…… 握り潰してそ知らぬ顔で棄てていた きみは 一体どこに どうしていたの 忘れてしまったやさしいきみは わたしに笑みを投げかけ…

詩:なにがなんだかわからない

突然ぽっかり開いた穴に放り込まれる なにがなんだかわからない 自分がどういう位置に陣取っていて 相手にどういう作用をもたらしたのか 困窮と違和のもみくちゃに 今にも押し潰されそうなのに どうして一方的にあなたがたが迫ってくるのか どうして双方向で…

詩:自己嫌悪

おぞましい 自分の姿を見よ そして 愛せるようになれ 無理だ 落胆しているよ、ほとほと嫌気が差してるよ いのちの根っこまで 幻滅しきっているよ そんなおぞましい自分を 「受容」なんてしなくていいから 幻滅するままに 知るんだ ほとほとあきれ果てた自分…