地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

2017-07-25から1日間の記事一覧

詩:客人

ここは小さい穴ぐら わたしの家 誰も立ち寄らないと ついしょぼくれて つい寂しく ついふてくされもして それなのにきょう あなたは ていねいな物腰で穴ぐらに進みきて 暖炉の前に手をかざしたりなどして 椅子に腰かけてくれる その止まった背中に ほんのり…

詩:穴ぐらと重力

薄暗い穴ぐらの奥まった 最も深い底の底 そこにわたしは置いてきた 窮迫したこわもての告訴状 かれらと千切(ちぎ)れた たったひとつの千言を どうしてもかれらに届けなければならない いちばん尊い言伝(ことづて)を だがかれらの歩幅は大きく その歩調は早す…

詩:晴れ間の急迫

行かなくてはならない わたしの足どりは重い 過去の亡霊が立ち上がってくる その亀裂が生じる瞬間が まるい調和のなかから ぎらと顔を突き出すのが 見えてしまうから 晴れた空が突然かげり 雨降る間もなく稲妻が落ちてくる その急迫が光るのを 鮮烈に感触す…