地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

〈特殊〉と〈一般〉のはざまで ―文芸社の講評に寄せて―(7)

まなざしとまなざしの交錯 精神保健関係の施設で話を聞いてもらっている人がいた。もはや味方は、その人しかいなかった。 精神科のシンラツ先生は、こう教えてくれた。ふんぞり返って、声のシャワーを浴びせかけるように、奔放にしゃべるが、すこしも傲慢を…

〈特殊〉と〈一般〉のはざまで ―文芸社の講評に寄せて―(6)

私に大通りは似合わない ところが今度は、「マジョリティに向けて広く、わかりやすく!」という理想を目指すミカンさんと、決裂していくことになる。 ミカンさんには、発達障害の家族がいる。その人のことが「わからない」という。だからこそ、同じ事情を抱…

〈特殊〉と〈一般〉のはざまで ―文芸社の講評に寄せて―(5)詩「ゆるして」

ゆるして 私の命は許されていない。社会からも。自分からも。 「もう、許してほしい」と、神に祈った――。 【ゆるして】 ゝ ひとひらの風が 窓枠に触れる ゝ 部屋を撫で さらう波が ゝ 沈殿する波と 絡まり合い ゝ 揺蕩いひらく ありのままに ゝ 巻き上がり …

〈特殊〉と〈一般〉のはざまで ―文芸社の講評に寄せて―(4)詩「打ち下ろす槌に」

燃え尽きて 命を賭けていた。森口さんが命を賭けて書いたように。失われた人間の尊厳を取り戻し、社会で生きる権利を確立するために。 人間の尊厳、命の尊厳とは何か? 社会的に抹殺された人の存在が、私には支えだった。裁判をする人の気持ちがわかった。ハ…

〈特殊〉と〈一般〉のはざまで ―文芸社の講評に寄せて―(3)

〈自分の部屋〉を〈通路〉の一部にしたくない 『マイノリティ・センス』がおおかたできあがった時、下読みした人の評価はさんざんだった。重い。暗い。わかりにくいと。読んでもらえない人が半数いた。そもそも「読めない」というのだ。 本の内容自体に関し…

〈特殊〉と〈一般〉のはざまで ―文芸社の講評に寄せて―(2)

オーダー・メイド 私が直面している発達障害の問題もそうである。 私の問題と需要を解決できる情報が、世の中にはない。世の中の問題と需要を解決できる情報が、私の中にはない。私の問題と需要は、世の中の問題と需要とは重なり合わない。“ちょっと”はある…

〈特殊〉と〈一般〉のはざまで ―文芸社の講評に寄せて―(1)

〈特殊〉vs〈一般〉 文芸社の講評を読んで、まず目に飛び込んできたのは、「全国流通を目指していただける内容」という文字だった。 「無理」だと思っていた。「それを目指しては私が潰れてしまう」と思っていた。 その理由を整理してみる。 〈特殊〉vs〈一…

執筆中の自著の講評に”言葉を失う”ほど震撼した 詩:ただ一人の観客へ

東京オリンピックが閉幕し、新型コロナウイルス第5波が落ち着き始めた2021年初秋。一通のレターパックがポストに入っていた。文芸社から届いた、聴覚過敏手記『マイノリティ・センス』の講評だった。 この春、文芸社主催の自分史大賞「人生十人十色大賞」に…

詩:花吹雪

遠い故郷を浮かべ 群青を帯び輝く細面が 水中に揺らぐように 潤む月は 夜闇に光沢を湛え ぴんと張ったしずかな冷気が 月の無言を呑んでいる しやめかな夜空に 散る 散る 熟れてゆく樹幹から離れ 透き通る白い花弁が 裸体のままひらき 無数の歌になって Good …