地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

2022-01-01から1年間の記事一覧

〈自己愛〉と〈他者愛〉のはざまで(3)世間の「愛」の認識

加害がなぜ「愛」とみなされるのか? という素朴な疑問 他人の生理的な、自然な反応を、攻撃して抑えつける。他人の思考や行動を強引に決めつける。やってもいないことを「やった」とか、やったことを「やっていない」とか。冤罪をつくる検察官まがいに、恫…

〈自己愛〉と〈他者愛〉のはざまで(2) 詩:ゾンビ

私は国際情勢に詳しくないので、ウクライナ侵攻に関して、マクロな面で意見する知識は十分に持っていない。が、関係の記事を読む限りは、私の体験した問題に通じる部分はあると感じている。 ロシアの精神的な大地。アイデンティティ。つまり〈わたし〉のアイ…

〈自己愛〉と〈他者愛〉のはざまで(1)愛と暴力

半年ほど前、身近な人(父)から暴力を受け、心を支えるために、手記(100頁ほど)を書いていた。感覚過敏でパニックを起こしたのが発端にある。 身近な人 E氏(医者)に相談したが、それは「愛」と言われ、いよいよ追い込まれた。(検索されたくないので、…

詩:時の陽光

(おまえが悪い んじゃない こんがらがった糸が 悪いんだ) 長い 長い争いは 鎧に覆われた 懐の内側に 深手を負わせた 血の滴る 鉄錆の心臓を みずからの手で 切り裂きながら (いつか 縫い合わせるのだ) (深手を負ったのは おまえだけではない) 色めく …

日記:家庭内暴力

私は家族に暴力を振るったことがある。それは悪だった。暴力を肯定しているわけでは決してない。 ただ、密室で暴君化した人々の行動原理を想像してみてほしい。「暴れる」には、「そうならざるを得なかった経緯」「そういう衝動に至った背景」が必ずある。 …

詩:囲う家

代々結び目をつくる 根の先端のある家で 私は私を組織する 傷の修復 武器の研磨 空腹の解消 ――でも 包み込む布団が 絞め上げたら―― 育んだ土が 生き埋めにしたら―― 緑の源泉が 毒を流し込んだら―― 組織する栄養が 牙を剝いたら―― ――風雪から守る 屋根が あぁ…

エッセイ:社会的に作り上げられた「家庭とはこうあるべき」は解体したほうがよいのでは?

何十年も前から言われてきたことだが、発達障害の子どもを持つ親、とくに母親の苦しみは、想像を絶する凄惨さである。森口奈緒美さんの『自閉女の冒険』を読めば、明らかである。私の母は、知的な困難があるので、そのような葛藤はたまたま免れたものの、父…

詩:考えることが好き

考えると詩が書けないよ、と 詩を書くひとがいった なるほど考えていると 詩が書けない わたしは欲張りだから 感じたい 考えたい どっちもやりたい どうしよう? 考える 割り切れない 答えは出ない 時間も気力も体力も 消耗する でも巨きな鉱山の 洞窟で 先…

詩:枯れ尾花

夜がひらき 落下する 瞑目 憩いの黄泉に横たえる 肢体の門に 引転する 幽かな知らせに 識る 探照灯が 浮き、沈み、 沈み、浮き、 浮いて、浮いて、 浮いて、いく 唯識の明滅が 闇夜の溶けた 黎明へ―― 閾の水面から 面を上げれば 地上の墓地 閂の落ちた 霊廟…

詩:空孔

――空孔ヨ、私ヲ呼ベ 魂鳴りの奥の 重心に居座る カルデラは巨きく 火口を開き 肉厚の ヒタヒタ震える 深淵、爆発の呼気の 発炎筒に 空隙の椅子は 背を待っていた ――空孔ヨ、私ヲ満タセ ある時 君が座ると 日溜まりは注がれ カルデラの口を埋めた 背凭れの形…

詩:祈り

神よ たとえあなたが見えなくなっても この祈りを許してください 神よ たとえあなたの声が聞こえなくとも この祈りを聞いてください 神よ たとえあなたがいなくなっても この祈りを残してください 神よ たとえあなたがまぼろしであっても この祈りを届けてく…

詩:回帰

硬く鋭く 己を掘り出す鑿の刃先は 絶つことによってしか 永遠に 我が骨に到達できないであろう (2016.11.28)

詩:記憶(Voice of the trauma)

かすかなひび割れの底から地獄が這い出してきた。 平静の裏に押し込めた記憶が悲鳴とともに躍り出て。 塔から見つめる暗闇は彼方まで続いていた。 声にならない唸りを上げて、ぞろぞろと列をなしていたのだ。 ここまできてはいけないよ、時々見張っているけ…

詩:放送禁止用語

〈ピー〉のなにがわかる? 〈ピー〉のなにを知っている? 〈ピー〉を聞いただけで耳を塞ぐ きみは 〈ピー〉だ 〈ピー〉を書いたひとは 何十年も 〈ピー〉のなかで 〈ピー〉にひっぱり回され 〈ピー〉にひっかき回され 〈ピー〉にひきずり下ろされ 〈ピー〉に…

詩:幻の風船

壮大な 幻の風船が弾けた 中身は見事に塵芥 残るがらんに赤面の体 そうだ、そうだ、それでいい 流れ着いた終末の明日に弾けていたのでは とっても耐えられるまい、さ…… それでも昏い感傷は 懲りずに夢をみるようにできているらしい とどまるところを知らない…

詩:ゆううつのみち

くるひもくるひも めらんこりいのかげが のべつまくなし うってゆく このみちのさきにのみ こたえにいたるもんはある わたしはそれを しっている ゆこう ゆこう ゆううつを ときどきは ささえるものが あるまいか ゆううつのうみは とてもしょうもうするから…

感想:「サミュエルを庵に閉じこめたとき+スティグマ」に寄せて

橋本正秀「サミュエルを庵に閉じこめたとき+スティグマ」 これはもう一夜の夢のようなお話。竹林の中に忘れ物のように佇んでいる小さな物置でのお話。奔放な竹に囲まれた一隅での物語。 サミュエルを庵に閉じこめたとき 僕に向かって咆哮するだろうか? サ…

「地底の声」へようこそ【ブログ概要】

「地底の声」へようこそ このサイトは、kouの書いたもの(詩、エッセイ、手記、日記、感想などの文章)を発表する場です。 「全生命が瞬間にひらききること。それが爆発だ。その生き方こそが芸術だ」 岡本太郎の言葉に背中を押され、存在の基底に横たわる、…

詩:隣人

足音たかく 雪崩れる嵐に乗って 賊の頭巾をかぶった隣人が 柵をまたぐ 花壇の若芽を 踏み荒らし 扉を蹴破りざま きみの鼓膜の奥にするどく 怒号する 〈俺の家のものになれ!〉 〈俺の家になれ!〉 〈俺になれ!〉 散乱する家具 きみは背後のない壁を後じさり…

小説:袋

男の顔に袋が被(かぶ)さっている。首まですっぽり嵌(は)まっている。袋の口は中途半端に開放され、風に揺れてビラビラしている。 ビニール袋のようだが、もっと透明で、景色がよく見える。音もクリアに聞こえる。このままテレビや映画や音楽を楽しむこともで…