地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

自閉スペクトラム

詩:異化の結実

異化には理由がある ひとりひとりに理由がある―― 何年前だったか、の 遠い昔 あれは違う、これは違うと、 会う人会う人に アナフィラキシーショック の電流を受けて 竦み上がっていた 違和感の看守が わたしを牢獄に 連れ戻し もう一歩も出られなくなった 会…

詩:別れ

一人の客が主人の店を訪れた 往来に面したショーウインドウには 色とりどりの商品が着飾って 見目麗しい愛想を振りまく 客人は百花の陳列に目を奪われ 弾んだ歓声を上げて ウインドウの端から端を行ったり来たり ここにあるのは主人の生き写しと 無邪気に微…

詩:カンテラ

巌(いわお)が影に沈む 闇黒(あんこく)の洞窟を行く 湿った石灰岩に沿って 奥、奥、そのまた奥深くーー 道の尽きた壁に 肉厚に隆起した 透明の膜を着膨れて しじまに鎮座する 異形の塊 ――それがわたし 君よ カンテラに灯をともし その手に掲げ持て そうし…

詩:誤解

「なんともない」よう取り繕った技巧の数々が 「目立たぬ」よう塗りたくった保護色の数々が 「人並みになる」よう蓄積した知識の数々が 「悪いところを直す」よう訓練した反射神経の数々が 「まともになる」よう刻苦精励した経験値の数々が ふつうを演じた手…

詩:barrier

barrierが邪魔をするんだ 僕の前に 自分を守るために囲い込んだ 皮膚と生理が蛹のように覆った 冷たく硬い殻 barrierが足りないんだ 僕のまわりに 溢れる音を拾い集め調節し 肉体と精神を脅かすものから 均衡を保つ把手 barrierが重いんだ 僕の心に 不安と恐…

詩:世界

巨大なうねりが追いついて 身体を包み込んだけど 私に触れることはできない 閉ざされた2つの扉 帰ろうときびすを返す でももうそこには何もない 見捨てられた赤子のように まっさかさまに落ちていく "はざまの世界"へ・・・ ありのままにあるうねり ぼやけ…

詩:limit

溢れる刺激が手のひらを超え 容器の目盛を突き破る 一つ、二つ、三つ・・・ 縦横無尽の熱気揺らぐ昼刻 満ち零れた信号 乱れる均衡に陰る鮮やかさ 手招きする惑乱に目を汚す ひとつところに癒着する意識 固定する視線が高見の旗を狂わせる 混沌の渦に崩れた片…

詩:反復の安楽と葛藤

生まれたときからここにいた 同じ道順を行ったり来たり あちらこちらに自分の足跡 両側にそびえる壁は 安楽の砦を築いていた 蟻の行列のように 列から外れることはできない 同じ道筋しか歩けない 自分の足跡が踏みしめられた 永遠の反復と往復の快楽 それで…

詩:こだわりのむすびめ

ころんでぶつかってひっかかって むすびめふやしてこだわって ほどこうともがいてつまづいて ながしなさいわすれなさいと かんたんにひとはいうけれど たくさんのがぞうやきつけられる たくさんのきおくがいきつづける あたまのみょうにかっせいかした へん…