地底の声

天寧煌子の文章置き場(主に詩)

針の意思

修羅の祈り

わたくしは争いに明け暮れました十字架の重みにひしがれて遂にひらたい原生動物となり地べたを這いずっております見下ろすことのない一つの目は固定された視界で 局限された風景を眺めるしかございません灯台よ あなたはその明晰な眼光で空からわたくしのう…

きみがいなくなったら

愛する人が死んだときは死なねばならぬと むかし愛した詩人がいった もし きみがぼくを置いて どうしてもぼくのなかから消えるというなら ぼくはぼくをくびるかわりに きみをこの手に生み出しましょう どこにもいないきみのうたを ぼくのうちに咲かせましょ…

カンテラ

巌(いわお)が影に沈む闇黒(あんこく)の洞窟の奥、奥、そのまた奥深くーー道の尽きた壁に肉厚に隆起した透明の膜を着膨れてしじまに鎮座する異形の塊――それがわたし 君よ カンテラに灯をともしその手に掲げ持てそうして黒く染まった足下を明らかに照らし…

穴ぐらと重力

薄暗い穴ぐらの奥まった 最も深い底の底 そこにわたしは置いてきた 窮迫したこわもての告訴状 かれらと千切(ちぎ)れた たったひとつの千言を どうしてもかれらに届けなければならない いちばん尊い言伝(ことづて)を だがかれらの歩幅は大きく その歩調は早す…