詩:記憶の塔
怒濤の保存が行く手をさえぎり
執念の塔となってそびえ立った
(日記四九冊)
(素描三四冊)
(生活二一冊)
(会話一七冊)
(研究八冊)
記憶×××冊
オドロオドロシイグチャグチャの
シドロモドロシイメチャクチャが
わたしを救い出してと絡みついて
覚え違いがあってはならぬ
ただひとさじのもれも許さぬ
すべてすべてを刻みつけてと
足もとにむらがりまとう
(コレヲドウスレバ)
振り向く背後に高殿が
うなりを上げて積み上がる
歩を進めるほどあわれな我執の頂が
再生の映像を載せて
新記録を更新する
(積載重量突破)
天を衝く建設
壊れた脳髄は保存を手放さない
明日は到来を尻込みする
(忘レラレナイ)
電脳空間に撒き散らして回収
赤面の残骸がふたたび頂を高くする
聖書の字句は皮肉を贈る
(蔵ニ収メズ)
オドロオドロシイグチャグチャの
シドロモドロシイメチャクチャが
蔵の扉を突き破る
執念の高殿は
明日の塔を形成する
(2018.9.19)