地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

自分の世界を描いた詩:大いなるものへ

このブログはほとんど見ている人がいないので気が乗らず放置していたのですが、半年ぶりに更新します。

 

私の世界

このエピソードはいずれ私のもう一つのブログで書きたいですが、中学1、2年生の時、突然強烈な自我が芽生え、「自分の世界」をもったことがありました。

私はその世界のために生き、死ぬと、その時思いました。

そしてその世界が見えなくなった時から、何十年にもわたる鬱が始まりました。

 

 

世界

 

中学2年生の時のエピソード

 心の中の何かが欠け落ちてしまったことを私は知った――それは「故郷」だった。故郷の色鮮やかな懐かしい景色を。

 社宅アパートの窓に掛かったブラインドから夕暮れを眺めていた時だった。自分の中から、これまでの「ありとあらゆるもの」が喪われるように思い、涙を流した。突然、何かが私を激しく打った。天の啓示のようないかづちが。

 

 

【大いなるものへ】

 

灰に染まる石室で、あなたは〈わたし〉を与えてくれた

日覆いの隙間から、見知らぬ風景の空から

それは突然降りてきた

初めて目覚めた人間のように 啓示は激しくわたしを打った

 

灰に染まる石室で、あなたは〈世界〉を与えてくれた

日覆いの向こうをまなざしは貫いて、遙か遠い山と雲の彼方から

それはわたしに呼び掛けた

未だ見ぬ郷愁に抱かれて 涙は満ちるよろこびを湛えた

 

あるとき、――それは死んでいた

巫女もかぐやも 猜疑の晦冥に呑み込まれ

長く白けた 罪が下った

底無しの 色彩失せた夜の始まり

 

あなたよ 〈世界〉よ 風景よ

色彩よ 音楽よ 物語よ

夢よ 幻想よ ふるさとよ

希望よ 自由よ 憧憬よ 流れるままに流れる涙よ

 

此岸からは届かない 澱んだ眼で瞳を凝らす

此岸からは得られない それは此処へ来るものだから

此岸からは叶わない 虚しく指先伸ばしても

此岸からは開かない 扉に答えの息吹なく

 

あなたよ、あなたよ、巫女は待ち

あなたよ、あなたよ、かぐやは想う

彼岸より遣わしたもう、胸の空に満ちる使を

罪深い盲(めしい)のうえへ

 

 それは、強烈な「自我」だった。何者かが欠け落ちてしまったという喪失感の中で、急激に強い「自我」が芽生えた。これまで自分というものをもたず、世界も知らなかった私が、「自分」と「神」を、そして「世界」を意識した瞬間だった。その強烈な感覚は、「自分」「神」「世界」を渾然一体とさせ、一つの世界を形成した。

『踏まないで! ―ある自閉症者の手記―より』