声・まっくら森

天寧煌子の詩置き場

わたしの中にある ふんわりしたやさしいこころを取り出して

まじまじと眺めてみる

やさしい、あたたかい、いとしい、やわらかい……

握り潰してそ知らぬ顔で棄てていた きみは

一体どこに どうしていたの

忘れてしまったやさしいきみは わたしに笑みを投げかける

 

ときどきは

こころを失ってしまうこともある

背を向け、拒絶して、急ぎ足で

死んだ瞳をのっそり投げ出して

笑顔のきみは はじめから存在しないかのように

空虚のうねりに呑みまれていく

 

守りたい価値の潰える世界の果てに

きみはあたたかすぎるもの

こころを殺して立ち向かうことが 最善とおもっていたけど

ただ 自分を守っていただけ

知っても きみは忘れ去られたまま

わたしの中で眠っている

 

いま

取り出した手のひらにとどまって

こうしてほほえんでくれるなら

いましばし

いましばし

そっといてほしい

 

(2015.11.9)

『声・まっくら森』に収録