地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

詩:異化の結実

異化には理由がある

ひとりひとりに理由がある――

 

何年前だったか、の

遠い昔

あれは違う、これは違うと、

会う人会う人に

アナフィラキシーショック

の電流を受けて

竦み上がっていた

違和感の看守が

わたしを牢獄に

連れ戻し

もう一歩も出られなくなった

会う人会う人に

衝突したものだった

 (じつは今でも

 そうなのだが――)

 

「同じ」を叫ぶ人々のなかで

わたしは「違う」の核心を

思春期の頃から知っていた

生涯かけて これを解明すると

決意するまでに

「同じ」に馴染みきった人は知らない

「違う」がどれほど迫害され

剥奪されるかを

生を血で染め上げられるかを

病気、障害、不名誉なスティグマ

わたしの戦争は

すべて「違う」からきていた

 

そんな「違う」を

犬の嗅覚以上の鋭さで

探知機以上の正確さで

発見するはたらきを

「異化能力」と名付け

収穫しようとしている

時は2022年

コロナはしぶとく猛威を振るい

プーチンが戦端を開いて

厄介で憂鬱な

とにもかくにも 時代の節目

 

「異化能力」の発現によって

わたしとすれ違った ある人は

鷹揚にも

「異化」を「異化」のままに

開花させようと

頭の風車を回して

「同化」と「異化」の並立する

瞬間の心の揺蕩いの

結晶する音を

星座の布置に透視し

磁力の集合を

多重のまま捉えた

収穫された創傷の墓標に

弔鐘を撞くように

 

今、結実するとしたら

時間を超えた

差異――意味の生産?

「異化」と「同化」の

パラレルワールド

交差することのない ふたつの音は

布置を保ったまま

時の裂け目に 合流する

 

(2022.3.21)

 

 

違和感

 

違和感