地底の声

天寧煌子の文章置き場(主に詩)

カンテラ

巌(いわお)が影に沈む

闇黒(あんこく)の洞窟の

奥、奥、そのまた奥深くーー

道の尽きた壁に

肉厚に隆起した

透明の膜を着膨れて

しじまに鎮座する

異形の塊

――それがわたし

 

君よ カンテラに灯をともし

その手に掲げ持て

そうして黒く染まった足下を

明らかに照らし出し

ここまで歩みきておくれ

 

  カンテラを掲げるな

  お前はたちまち

  狙撃されてしまうだろう

 

君は知らないのだ

この照明なしに

洞窟を 闇黒を

寒天の着膨れを

わたしと君を隔絶している白壁を

決して見られないことを……

 

  カンテラを掲げるな

  カンテラはなくとも

  お前はお前でいられる

 

君は知らないのだ

お前とわたしの基軸を駆動している

車輪の型が異なるからくりが

透明の檻を産み出した

はじまりの物語を……

カンテラの照明なしには

晒せない素肌を

永遠に行き交わない言伝を

秘められた仕掛けを

 

君よ カンテラを掲げよ

そうして洞窟を 闇黒を

明らかに照らし出し

ここまで歩みきておくれ

君よ わたしが見えるまで

君よ わたしに至るまで

 

(2018.3.22)

(2020.12.31推敲)