地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

詩:枯れ尾花

夜がひらき 落下する

瞑目 憩いの黄泉に横たえる

肢体の門に 引転する

幽かな知らせに

識る 探照灯

    浮き、沈み、

   沈み、浮き、

  浮いて、浮いて、

 浮いて、いく

唯識の明滅が

闇夜の溶けた 黎明へ――

 

閾の水面から 面を上げれば

地上の墓地

閂の落ちた 霊廟に

屋根の下を

夜毎、夜毎、徘徊する

枯れ尾花の

ゆらめく影が――

    いる、いない、

   いない、いる、

  いる、いる、

 あぁ、いる、

朧な輪郭で

彷徨している

 

夜にひらく 昏い朝の

来訪を告げる 識らせが

唯識を 己の座へ

墓地へ 連れ戻していく

    あぁ、来ないで、

   こっちへ、来ないで、

  来ないで、来ないで、

 あっちへ、行って、

見ないで、見ないで、

見つからないで!

 

枯れ損なった 枯れ尾花の

足音を 手繰り寄せる

張り詰めた 唯識

肢体の重力を 持ち上げ

浮揚を繰り返す

闇夜の溶けた 黎明に

 沈め、沈め、

  還れ、還れ、

   墓碑の、盛り土の底へ

    黄泉へ、黄泉へ、

     この我意もろとも

      触れ 識ることの

       途絶した静寂

        安息の 空へ!

 

(2022.3.4)