地底の声

世の中からズレてる人の書いたもの(詩・エッセイ・日記など)

詩:考えることが好き

考えると詩が書けないよ、と

詩を書くひとがいった

なるほど考えていると

詩が書けない

わたしは欲張りだから

感じたい

考えたい

どっちもやりたい

どうしよう?

 

考える

割り切れない

答えは出ない

時間も気力も体力も

消耗する

 

でも巨きな鉱山の

洞窟で

先人の手真似で

誰も見たことのない

金塊が

芋づる式に

たくさん採れる

ざくざく採れる

結局どういうこと?

黄金長方形にならないけど

輪切りにした断片が

つぎつぎに

まぶしい産声を上げて

きらりと姿を見せる

ああ ユリイカ

その燭光

目を見張る財宝

わたしだけの!

すべての人の

 

ゴチャマゼはゴチャマゼのまま

仕分けていくと

色や形が顔を出す

滓は濾し分けられ

概念が鮮やかに

浮き出てくる

長い年月かけて熟成された

その一滴は

入り組んだ迷宮に

幾重にも張り巡らされた

秘密の鍵を

いっせいに解き放つ

とびきり美味しい

 

考えるパワーは無駄?

そんなことはない

見て あの鍾乳石を

天井から一滴一滴

したたり落ちる思考は

かたい石筍となって

わたしの背骨になる

たった数センチの

やがて石柱となる

ダイヤモンド

 

考えること

わたし 好きだな

考えて考えて考えて

明日の背骨を

組み立てたいな

素敵な瞳に

出合いたいな

 

でも

頭の変なところが膨らんで

感じることばが

おしくらまんじゅうする

どうしよう?

感じることと考えることは

別のもの?

思惟が感覚を駆逐する

感覚が思惟を駆逐する

手を取り合ってどうなる?

えい感じちゃえ

考えちゃえ

どっちもやっちゃえ

頭も心も

煙が出てきた

 

(2022.3.5)